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設計コンセプト
クライアントは、受け継いだ家の良いところを残した、家族が毎日心地よく生活できる空間の実現を希望されていました。
計画は、家人に大切に見守られてきた「庭」を中心として、季節感を肌で感じることができる「吹きさらしの渡り廊下」で門屋と母屋をつないで「庭」を切り取ることにより、今まで気付かなかった「庭」本来の良さを導き出すことから平面計画をしました。
構造に関しては、新たにベタ基礎の上に柱を増設し、既設柱・梁と金物で締結し耐震性を高めています。
設備は、木造木組現し工法のためオール電化として火災への安全性に対処しています。
また、リビングルームは空間が大きいため電気温水パイプ式床暖房を設置。既設の木組みを活かし、木の持つあたたかさと珪藻土・漆喰などの自然素材で構成された室内空間から自然の移ろいを感じられるように、開口部は木製建具にして全開できるようにしています。
建て主のコメント
この家は、戦後まもない時代に父が必死の思いで建てた家でした。当初はここに手を加えることに葛藤がありましたが、平井さんの「この家を100年住める家にしましょう」という言葉を聞き、ようやく決心できました。
その結果、耐震性に優れた安全で安心な家に生まれ変わり、家中のいたるところで中庭の四季を感じながら穏やかな生活を送れています。リビングからの景色は家族みんなのお気に入りで、特に冬は快適な電気温水パイプ式床暖房のおかげで以前よりも家族の時間が増えました。
料理好きの娘はIHクッキングヒーターの使いやすさに大満足。
私のとっておきはお風呂で、旧家屋の名残を伝える瓦や靴脱ぎ石をあしらった風情ある坪庭を眺めては、両親との思い出にひたる有意義な時間を過ごしています。
今、平井さんや日の出組の方々の誠意ある仕事により、父の思い出が詰まったこの家を後世にしっかりと受け継げる形にリフォームできたことを本当にうれしく思っています。
審査委員の講評
亡父が大変苦労して建てた家と庭を大事に活かしたい。暗い、寒い、不便を解消したい。
しかし工事予算は限られている。このような要求と制約のもとでの築58年の民家の再生である。
庭を挟んで母屋とかって作業場として使われた建物がある。再生のポイントは作業場を子供部屋や寝室に改造し、母屋と回廊式のオープンな渡り廊下で結び、庭をコの字型に囲んで家族の記憶に残る庭を家の中心に据えたところにある。
母屋の改造によって大きなLDKを確保し、リビングは建具を開放すると庭と一体になる。
リビングには電気温水パイプ式床暖房が設置され寒い冬でも家族が集まる場所になっている。
古い民家と庭の良さを十分に活かし、快適で明るい近代的な住居に再生したすばらしい作品である。