
令和7年度の秋季安全衛生協議会を実施しました。建設業界ではいま、昭和の万博時代と比べれば、労働災害は確かに減少傾向にあります。時代が進み、機材は高性能になり、現場の意識も上がっている。
それでも、まだ「ゼロ」にはなっていません。
■ 建設業は死亡事故の31%を占める現実
労働災害全体の死亡事故のうち、31%が建設業。
さらにその内訳の中で最も多いのが**墜落・転落災害(33%)**です。
理由はシンプルで、やる作業が“高いところ”と“狭いところ”が多いから。
昔よりハーネスは良くなったし、安全帯の使用も厳格になった。それでも事故は起きる。
■ 一人親方の死亡事故 ― なぜ減らないのか
一人親方の死亡事故がいまだに大きな割合を占めるのは、以下の理由が典型です。
- そもそも誰も安全を管理・監督してくれない
- スケジュールがタイトで**「今日だけや、行けるやろ」**と無理をしがち
- リスクアセスメントが形式的になりやすい
- 足場や仮設の「ちょっとした不備」を自分で判断してしまう
現場を多くみてきた立場としては、
“経験があるほど危ない”
という、皮肉みたいな現象もハッキリ感じる。
■ 過去の具体的事例:ちょっとの油断が最悪につながる
ここでは実際にあった典型的な事故例を紹介します。
● 事例①:脚立作業での転落(屋内)
内装工事で脚立上から電気配線の作業。
いつもやっている作業だったため、脚立の角度・安定確認を怠った。
床にわずかなホコリが残っており、脚立が滑って転倒。
後頭部を強打し、搬送後に死亡。
ポイント:
脚立は安全なようで、実は現場で最も多い“軽視されやすい墜落ポイント”。
● 事例②:2階窓からの転落
窓まわりの補修作業。一人親方。
足場を使わず、窓枠に片足をかけ外側に体を乗り出して作業していた。
バランスを崩して落下。即死。
ポイント:
「5分で終わる作業やから」ほど事故が多い。
● 事例③:屋根上作業での転落
瓦屋根の修繕でハーネス未使用。
「瓦がズレてたから、ちょっと直そうと思った」
わずか数歩歩いたところで滑り、そのまま2階から落下。
ポイント:
“ハーネス付けるのが面倒”の積み重ねが死亡事故に直結。
■ 結局のところ、答えはシンプル
どんな安全対策を語ったところで、根っこはひとつ。
基本に戻れ。これに尽きる。
- 足場に問題があるなら作業を止める
- ハーネスを面倒くさがらない
- 作業前に危険予知(KY)をちゃんとやる
- 無理・焦り・慣れを現場に持ち込まない
設備が進化しても、人の気持ちが変わらない限り事故は止まりません。
■ 最後に
建設業の安全は結局、“地味な作業を丁寧に積み上げる”ことの繰り返しです。
昭和の万博から令和の万博へと時代は変わりましたが、安全に関する本質は何も変わっていません。
今年の秋季協議会が、もう一度“当たり前の作業を当たり前にやる大切さ”を見つめ直す機会になれば幸いです。









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