物件名:レジェール(ケーキ店)
構造:木造
階数:2階
延べ床面積:197.09㎡
敷地面積:451.13㎡
建築面積:127.76㎡
竣工年月日:平成23年10月7日
建築コンセプト
”南フランスの田舎の古いケーキ店を現代風にリニューアルした音楽好きなパティシエのいるお店”
ケーキに対するこだわり、音響に対するこだわりが強く、南フランスの田舎の建物をイメージし、好きなスピーカーの色も使って、デザイン設計から施工まで行いました。
また田舎の雰囲気を出すための工夫として、新しい梁をエイジング塗装をするなど、ちょっとした工夫を多数に散りばめています。
南フランスの田舎の家の特徴
※これはプロヴァンス地方にある民家のイメージです。
南フランスや南ヨーロッパの特徴として、石積みの壁に漆喰を塗り、独特な柔らかい雰囲気があり、小さな四角の小窓が並ぶ家が今でも多く残っています。
全く新しい家よりも、使っていけばいくほど味が出てきて風合いを増してくる建物ばかりで、どこか可愛らしい雰囲気も持っています。
ただ、石積み住宅という文化は、地震が少ない土地だからこそ発展したものなので、日本で同じ工法を使うのは様々な問題から向いていません。
そのため、どのように南フランスの田舎の雰囲気を出すのかは建築家の腕の見せ所でした。
外壁は南フランスの漆喰壁を意識した左官仕上げと小さな窓
建物の構造自体は、耐震性などの兼ね合いもあり木造ですが、要望通りの南フランスの田舎の建物のようにするために、サイディングの上から漆喰壁を意識した左官で塗り仕上げを行っています。
また、漆喰壁にしなかった理由は、南フランスと日本の環境の違いにあり、南フランスは地震が少ない国ですが、日本は地震が多いため、漆喰自体がひび割れを起こしてしまいます。
また、幹線道路が目の前なので、大きな車が通った時にも建物が揺れてしまい、これもひび割れの原因となるので、外壁の仕上げでも漆喰を利用するのは向いていませんでした。
また、設計段階で、こじんまりとした窓が整列するようにし、バルコニーにはちょとした花とテントで更に雰囲気を出せるようにしています。
漆喰の雰囲気ある外壁の仕上げ材はジョリパット
このように左官職人が1コテづつ丁寧にジョリパットを塗って仕上げています。
3つの動線を徹底的にこだわり使いやすさを追求して設計
- 生産ゾーンの動線
- 材料搬入の動線
- イートインカフェ対応の動線
レジェールはイートインスペースがあるため、限られた厨房スペースの中、この3つの動線をラフプラン作成時から、最も効率の良いレイアウト、設備機器の選定、照明・空調機の配置などに最も時間をかけて打ち合せを進めました。
イートインカフェはどうしても、提供時間を早くできるような工夫が必要です。それだけでなく、ケーキをショーケースに並べたり、お会計する際の時間を短縮できるようにする必要もあり、販売だけのケーキ店さんとは少し違った動線設計をする必要性があります。
また、厨房から客席及び、客席間の建具はスタッフの動線を考慮して引き戸(オートクローズ)にしています。
お客様の動線も2つに分けてシンプルに使いやすく
入り口から入って右側がショーケースが並んでいる販売スペース、左にイートインスペースを設けました。
動線を真っ二つにする方法はよくある方法ですが、これらはいかにお客様がストレスなく、ゆっくりとケーキを見ていただけるようにできるのか?またイートインを利用したい方は、早く座ることができるのか?ということを満たすためには最適な方法です。
ショーケースや陳列棚をオシャレに飾るだけでなく、色々見て楽しめるレイアウトに
レジェールのご依頼主様は、既に数店舗ケーキ店を展開されていたため、ショーケースや陳列台は固まっていましたが、どの順番で商品を見せるのかが大切です。
そこで、来店者の流れを考え、焼き菓子コーナーを見ながら奥まで進み、レジに向かってケーキを選べるレイアウトにしました。
「これ美味しそう!」「これも美味しそう!」と、いろんな商品を順番に見せることで、購買意欲も高まり、いろんなものを買っていただくように繋げる意図もあります。
また、ケーキのショーケースの向こう側には大きなFIX窓を設置し、厨房の中を見えるようにしました。
ケーキ店が一番忙しいクリスマスにも使いやすい設計上の工夫
カフェの客席部に設置したテラスサッシは外部に向けて全開に出来るようにしています。
その理由は、ケーキ店の一番忙しいクリスマス期間の予約ケーキの引き渡し窓口に代わり、一般客との動線を分けれるようにしています。
人気店は長蛇の列ができてしまい、入り口が一つの場合は予約していないお客様が買いに来られた際に非常に混雑してしまいますので、効率よく繁忙期を迎えられる大切なスペースでもあります。
お客様の声(2017年5月にインタビュー)
自分で言うのもなんだが、休日に店に行くと「ええ店来たなぁ」と心地よい感じがしますし、来店くださるお客様もそう感じていただいています。
また、玄関戸やフローリングも年月が経つにつれて風合いが出てきて、あえて自動ドアにしなかったのが良かったと感じます。
ノスタルジックな感じが出ており、外から店の内部を見た風景と、店の中から外を見た風景、どちらも懐かしさとあったかさを感じることが出来ます。
どこか懐かしい雰囲気のあるイメージをコンセプトにして、それが実現できた!と感じます。
ちょっとしたこだわりのある、アンプ(スピーカー)の配置、色(青色)をさりげなく看板の色とあわせられているので嬉しいですね!